歯を失った時に人工的に治療する方法には、噛む力やその他の力を何が負担するかによって、ブリッジ、部分入れ歯、総入れ歯、インプラントの大きく4種類に分けられます。
ブリッジやインプラントができない場合は入れ歯という選択肢になります。連続3本失うと入れ歯かインプラントの2択です。
本歯を失えば、両隣の歯を削って3本つながった金属を入れる、いわゆるブリッジが従来からある治療法です。
ブリッジで対応できないのは、多数歯の欠損がある場合です。
特殊な例では犬歯を含まない前歯の欠損です。
連続4本までブリッジができる場合もありますが、他は2歯連続欠損までと考えて下さい。
1本分を3本連続のブリッジで補うことはさほど問題は無いのですが、2本分を5本連続のブリッジで補うことは支える歯に負担が大きすぎて長持ちしないと言われています。
インプラントとは失った自分の歯の代わりに人工歯根を埋め込み、人工の歯を装着させる治療方法です。まるで自分の歯の様に自然に噛める為、乳歯、永久歯に続く「第3の歯」とも呼ばれています。
ですが、インプラントも骨の状態や健康状態によっては、対応できない場合があります。
歯根部を支える為には、歯槽骨に十分な厚みが必要になります。さらに、その歯槽骨には、弾力があり、骨内がびっしり詰まっている良質のものでないと埋め込んだ歯根を支える事ができません。他には、歯槽骨とインプラントに十分な親和性が、歯自体が咬む力に耐えられるものでなければなりません。特に、骨粗鬆症になりやすい女性の場合は、歯槽骨の密度が落ちている可能性があるので注意しなくてはなりません。
上の歯のインプラントも場合によっては出来ない事もあります。上あごのすぐ上には上顎洞という穴があり、この穴のせいで骨がかなり薄くなっています。なので、上あごにインプラントする場合も、事前にCTスキャンなどによる精密検査を実施して、骨の厚さと質について調べる必要があります。
インシュリン依存性糖尿病の方で、血糖値を良好にコントロールできない人は、インプラント治療は避けたほうが良いとされています。
糖尿病になると、糖が細胞内に取り込まれません。体の細胞のエネルギー源となる糖が送り込まれないため、細胞は一種の飢餓状態におかれることになります。これが原因で様々な組織の細胞に障害が発生するのが糖尿病の特徴です。
血管の細胞の障害により傷の治りが悪くなったり、免疫系の働きの低下によって、細菌感染に対する抵抗力が低下したりすることはその典型例です。なので、糖尿病が進行すると、歯周病が発生しやすくなります。歯周病は進むにつれて、インプラントと骨を接合させにくくし、仮に接合ができたとしても、インプラントを支えられなくします。
このために手術のリスクも上がることが考えられます。しかし、糖尿病の人がみんなインプラント手術をできないという事ではなく、血糖値が良好にコントロールされていれば、インプラント治療を受けることはできます。ただし、その場合には、手術の規模を最小化することが条件となります。
急性肝炎、肝硬変、重度の肝疾患のある人も、インプラント手術を受けるのは危険です。
合成されない他、血液を凝固させる因子も合成が十分でありません。手術をすると血がとまらなくなってしまうことも考えられます。
さらに手術時に投与される薬剤が肝臓で代謝されないこともあり、十分な術前評価が必要です。
重度の心臓病の人も残念ながらインプラント手術は避けるべきとされています。
思い当たる方は最初に内科医の診断を受けていただきます。心筋梗塞については、発作後半年以上経過している場合、インプラント治療を行えるケースがあります。
一方、心臓弁膜症で人工弁置換術を受けられた方や、不整脈治療のために体内型ペースメーカーを入れている方は、口腔内の細菌がこれらの人工物に付着して感染性心内膜炎を起こす可能性があり、やはりインプラント治療は避けたほうが良いとされています。
腎疾患にかかると免疫力が低下することも多く、傷の治りが通常の人よりも遅いため、インプラント治療に注意が必要です。とりわけ血液透析を受けているような場合は、骨がもろくなっているため、骨とチタンの結合が難しくなります。インプラント治療は不適応です。
人工透析と受けている人などの、血液の循環をよくする薬を投与されている人も、治療後の止血が難しいため危険です。
コントロール不良の高血圧症や感染に弱い持病のある方もインプラント治療は不適応です。他には、歯の噛み合わせが極端に悪く歯がボロボロの人や歯が抜けたまま長期間放置していた人、歯周病がかなり進行している人などは、骨の密度が低下していたり、埋め込む箇所が劣化していたり、インプラントが接合しない可能性がある為、単純なインプラント治療をする事が難しい場合もあります。