入れ歯は自然の歯とは違い、口にとっては異物です。よって違和感があるのは当然とも言えます。入れ歯を初めて入れた方は、「こんなものを入れたら食事がしづらい」とおっしゃると思いますが、もう使いこなしている方は、「入れ歯がないと食事しづらい」ときっとおっしゃいます。要は慣れなのです。異物感や発音は、基本的には2週間~1ヶ月程度で慣れてきます。また、頬や舌を噛む、ということも次第になくなってきます。私たちは、最初から鉛筆で字が書けたわけではなく練習をして習得しました。初めて入れ歯を入れる方にも同様のことがいえます。また、入れ歯を何個も作製している方でも、歯並び等が変わると最初は慣れずに発音しづらかったりします。これも次第に慣れてくる場合がほとんどです。
歯を失った部分の歯ぐきがくぼんでいたり盛り上がっていたりすると、噛んだ際に歯ぐきに負担がかかり、痛むことがあります。特に入れ歯と歯ぐきの間の隙間が大きいと痛みが強く出ることがあり、うまく噛めません。噛み合わせがずれていると、人は無意識に噛み合わせを整えようとします。噛む力が均等に分散されず、部分的に集中してしまうところができて痛みが出ることがあり、思うように噛めなくなります。
入れ歯がぴったり合わないと、ものがよく噛めなくなり、
①消化吸収能力が低下する
②胃に負担がかかる
③はっきりと発音ができなくなる
④頬や舌を噛む
⑤頭痛・肩こり・腰痛など全身の痛みが出る
上記のような症状がでることがあります。
しかし、慣れてくると日常生活でも支障をきたさなくなり、快適な生活を送れるようになります。
これは、上顎の入れ歯の後ろの部分が長いために起こることがほとんどです。人によってはすぐ気持ち悪くなる方もいれば、入れ歯をかなり後ろまで設定しても大丈夫な方もいらっしゃいます。
気持ち悪い場合、入れ歯の後ろを少し削って調整する必要があります。 たまに、入れ歯が動きやすいために気持ち悪さを訴える方もいらっしゃいます。そういった場合、入れ歯が動かないように修理や噛み合わせの調整が必要になります。
お手入れとしては
①ご飯を食べたら外して流水で汚れを落とし、歯磨き粉はつけずにブラシで磨く
②夜寝る時は外して水の中で保管する。その際入れ歯洗浄剤を使用する
といった方法があります。
歯磨き粉の中には研磨剤が入っているものがあります。研磨剤をつけて磨くと、入れ歯が削れることがありますので歯磨き粉は使わない方が良いです。またあまり硬い毛のブラシも義歯を傷つけますので、入れ歯専用のブラシ、または自分の歯を磨いて毛先が開き、柔らかくなってきた歯ブラシ等を使用した方が良いでしょう。
夜寝る時は外して水中で保管します。24時間ずっと入れ歯を使用していると歯ぐきが疲れてしまい、悪影響が出てしまいます。なので、1日のうち必ず数時間は入れ歯を外す時間を作った方が良いでしょう。入れ歯を指で触ってみてちょっとヌルヌルする場合、それは目には見えない細菌がまだ残っている証拠です。そういった場合、市販の入れ歯洗浄剤を使用します。化学的に消毒することができます。
上顎の歯がほとんどなくなってしまった場合、上顎の歯ぐきのかなりの部分が入れ歯で覆われるため、熱を感じにくくなったり、味が変わったりすることがあります。特にプラスチックで製作した場合は熱を伝えにくいため、熱い飲み物でやけどをしやすくなりますので注意が必要です。
味は、熱感覚が鈍くなることや味を感じる細胞が入れ歯によって覆われることで変化すると考えられます。熱を感じやすくするために金属床義歯を入れたり、インプラントを用いて歯ぐきをあまり覆わない入れ歯を入れたりすることで改善できる場合があります。
これは、入れ歯の噛み合わせの変更に頬や舌がまだ慣れていないせいで起こります。次第に慣れていくものですが、どうしても慣れない場合、噛み合わせを少し調整することで改善することが多いです。入れ歯を初めて入れる場合には、元々歯が無かった部分に頬や舌が入り込むため、頬や舌を噛んでしまうことがよくありますが、次第に慣れてきて噛まなくなります。それでも噛んでしまう場合、噛み合わせの調整が必要となります。